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広島高等裁判所 昭和55年(行コ)2号 判決 1982年6月10日

広島市中区千田町一丁目四番一五号

控訴人

有限会社中道不動産

右代表者取締役

中道秋夫

右訴訟代理人弁護士

椎木緑司

橋本保雄

平見和明

同市同区加古町九番一号

被控訴人

広島西税務署長

米谷誠

右指定代理人

有吉一郎

毛利甫

広光喜久蔵

石井敬三

滝川譲

右当事者間の法人税更正処分取消、源泉所得税の納税告知処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  申立

1  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が控訴人に対してした昭和四六年一月一九日付控訴人の昭和四四年度分の法人税についての再々更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(審査裁決により修正されたもの)並びに昭和四七年一〇月三一日付昭和四四年一二月分の源泉所得税についての納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を取消す。

訴訟費用は一、二審を通じて被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文同旨

二  主張及び証拠

後記の部分を付加する外は原判決の該当欄記載のとおりである(ただし、原判決四枚目表四、五行の「異議申告をしたが、」を「異議申立をしたところ、被控訴人はこれを却下した。」と改め、四枚目裏五行の末尾に「控訴人の確定申告から(一)の処分に対する裁決までの控訴人の申立、被控訴人らの処分の時期、内容の主なものは別表(三)のとおりである。」を加え、九枚目裏一行の「本件(一)の処分について」を「裁決による一部取消後の(一)の処分について」と改める)からこれを引用する。

1  控訴人の主張

(一)  被控訴人の当初更正処分及び再々更正処分((一)の処分)には原判決別表(三)各該当部分のほか別紙理由書のとおり記載されている。

(二)  しかし、右事実関係では当初更正処分の理由付記を不備とする点が明確でない。

(三)  もし、右の点につき違法があるとすれば、更正処分に対して、控訴人が異議、審査を申立てているのであるから、この手続において更正処分を取消した上、再更正処分をすべきものである。

(四)  再更正処分において申告と同額の処分をすることは許されないものであり、被控訴人は更正処分における課税標準額等が過少である、と判断しながら、再更正処分をしているので、その効果を生じない。更に、再更正処分には理由付記に不備もある。

(五)  再更正処分と更正処分の取消とはその態様、効果が相違するので、前者を後者と認めることはできない。

(六)  以上の事実関係によるとき、本件再々更正処分が、直ちに違法とならないとしても、信義則に反する処分である。

2  被控訴人の主張

控訴人の前記主張(一)は認める。

3  証拠

被控訴人が乙第一七ないし第二〇号証を提出し、控訴人が当審における証人戸田博敏の証言、控訴会社代表者中道秋夫本人尋問の結果を援用し、前掲乙号各証の成立を認めた。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は以下に訂正、補充する外は原判決該当欄記載のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決一六枚目表六行の「一部取消」以下一〇行までを「一部取消の裁決がされたこと、右確定申告から右裁決までの控訴人の申立、被控訴人らの処分の時期、主な内容が原判決別表(三)のとおりであることは当事者間に争いがないか、または明らかに争いないところである。」と改める。

2  同一六枚目裏五行から一七枚目裏一〇行までを「被控訴人の本件第二次更正処分は第一次更正処分の更正通知書の更正理由付記に不備があつたとするものであることは当事者間に争いがなく、再更正処分に関する国税通則法二六条に規定されていない場合に当る。」と改める。

3  同一八枚目裏末行に続けて「控訴人は当初更正処分の理由付記を不備とする点が明確でない、というが、右理由記載と本件再々更正処分の付記理由が控訴人主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、これを対比するとき前者の理由が不備であることは明確であり、再更正処分の理由については、当事者間に争いないその理由記載と前記各処分の理由記載を対比するとき何ら不備の点はない。」を加える。

4  同二一枚目表一〇行の「原本の存在及び成立に争いない」から裏二行まで、二二枚目表七行の「を認めること」から八行の「そして」まで及び裏二行の「ことは当事者間に争いないところである」を削除し、二行の「ものである」に続けて「(以上のうち保証債務を引受けた、との点、昭和四三年末の雑損処理及び昭和四四年三月二七日の仮払金勘定による処理は原審における控訴会社代表者中道秋夫本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められ他は当事者間に争いがない)。」と付加し、裏三行の「認定事実」を「事実」と改め、六行ないし八行の括弧部分を削除する。

5  同二四枚目表八行の「本人尋問の結果」の次に「(以上いずれも一部)」を加え、二七枚目表六行の「一四八万三、九二〇円」を「一四九万三九二〇円」と改め、裏三行の「四八〇万円、」の次に「同人の妻」を、四行の「二〇万円であり」の次に「(右出資額の点は当事者間に争いがない)」を加え、四行の「一人である」を「一人の法人税法上の同族会社である」と改める。

6  同二七枚目裏一〇行及び末行の「魚業」を「漁業」と、三〇枚目表四行の「時期、つまり、」を「時期と認められるところ、」と改める。

7  同三〇枚目表一〇行に始まる四項を「右賞与認定額を控訴人の主張所得金額に加算して、これに法人税法、国税通則法の関係法条を適用したとき、前記(一)の処分における審査裁決による修正後の法人税額及び過少申告加算税額となることは算数上明白である。」と改める。

8  控訴人が当審で主張する事実、見解は前記(一)の処分の効力と関係がないものであり、当裁判所は採用しない。

9  原判決三一枚目裏一〇行以下の三項を「以上の次第で、被控訴人がした本件(二)処分は課税済給与総額に認定賞与額一一一万〇六〇〇円を加算した金額を基本として、所得税法、国税通則法の関係法条を適用すると算出される数額になり、正当なものである。」と改める。

二  以上の次第であるから、本件控訴を理由ないものとして棄却し、行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 辻川利正 裁判官 梶本俊明 裁判官 出正清)

理由書

一 当初更正処分の更正の理由

1 加算

(一) 貸倒損 一一一万〇六〇〇円

瀬戸内養魚観光株式会社に対する貸付金を債権放棄したもの、上記については、四三年一二月期に一五〇万円の貸倒損を計上しながら更に当期中に上記金額の貸付を行い、当社に不当な損失を与えたもので代表者個人の負担に帰すべきものと認める。

(二) 土地 五万五〇〇〇円

高陽町大字岩の上字山田の土地棚卸もれのもの

(三) 損金計上役員賞与

中道モモヨに支給した賞与(期末、未払金に計上のもの)

(四) 認定賞与(支払利息)

四三年一二月期否認借入に対する支払利子、代表者に対する認定賞与とする。

2 減算

(一) 未納事業税認容 一六万五二八〇円

3 差引加算計 一三五万〇三〇〇円

二 再々更正処分((一)の処分)の理由

1 貸倒損金 一一一万〇六〇〇円

瀬戸内養魚観光(株)に対する貸付金を債権放棄したもので、同社に対し、四三年一二月期(前期)に一五〇万円の貸倒損を計上しながら、更に当期中に瀬戸内養魚観光(株)の銀行借入金に対する連帯保証を代表者中道秋夫個人が行つておるにかかわらず、会社が肩代りし、当該保証債務の弁済金額一一一万〇六〇〇円の貸付を行い、会社に不当な損失を与えたものであり、代表者中道秋夫個人が負担すべきものと認める。

処分については、申出等により代表者からの借入金と相殺する。

2 土地 五万五〇〇〇円

会社の所有資産である高陽町大字岩の上字山田の土地期末たな卸計上もれのもの

3 損金計上役員賞与(中道モモヨに支給した期末未払金計上) 二〇万円

中道モモヨは、代表者中道秋夫の妻で、同族会社であることについての判定の基礎となつた株主等に該当し、かつ会社は、総員二名の企業であつて代表者である夫の不在時には、本来担当の経理以外の業務についても従事しており、経験年数等より、その能力を十分と認められ、実質的にみて、会社の経営に従事しているものと認められますから税法上役員とみなされます。したがつて、中道モモヨに対して支給した未払金計上による損金処理の賞与二〇万円は役員賞与として、損金算入を認められないことになります。

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